昨今の日本では経済発展が頭打ちとなり、インターネットにより情報も得やすくなり
価値観の多様化がますます進んでいます。
少子高齢化や、生涯独身で過ごす方が増えていく現代において、家として高額な費用をかけてお墓を建てて管理費を払い続けていく。
お墓を持つこと自体がナンセンスであると考える人も増えてきているのではないでしょうか。
高度成長期の時代と比較すると、3人や4人兄弟が当たり前だった時代から、現在では核家族化も進み、
一人っ子だったり子供を持たないという価値観が定着しています。
かつては各家庭に必ずお墓があり、代々長男が引き継いで次男以下は独立してお墓を建てるというのが当たり前の時代がありました。
兄弟の人数が減り、一人っ子同士が結婚したような場合は2つのお墓を継承することにもなります。
お墓であったり、檀家といった制度自体が時代に合わなくなってきてるのかもしれませんね。
お墓を持たないとどうなるのか解説をしていきます。
お墓はなくても困らない
気持ちの部分を排除してしまえば、お墓はお骨を収める場所です。
納骨場所が各家のお墓なのか、永代供養墓といわれる合同の石碑の下なのか、樹木葬といわれる場所なのか。
納骨をするという役割は果たしていますので、どこに収めても困るということはありません。
むしろ、お墓があるのに継承者が途絶えてしまった時の方がよっぽど困った状況になるようにすら思います。
そもそもお墓を建てられない場合がある
お墓を持ちたいと思ってもお墓を持てない場合があります。
お墓を建てる為には、継承者が必要という規定のある墓地が多いのが実情です。
お墓は前提として代々承継していくという考え方があります。
永代使用料というのも不思議な制度で、お墓を建てる為の区画(土地)を借りる契約ですが、
継承する方がいる限り永代にわたり仕様ができるというものです。
継承者が途絶えてしまう場合は、墓石を建てた区画を更地にして返還をしないといけません。
代々承継出来ない人にとってのコストパフォーマンスは最悪と言ってよいと思います。
継承者が途絶えるのが決まっている状況なのにローンまで組んでお墓を建てた方もいらっしゃいました。
大切な家族が亡くなり、十分な供養をしなければという責任感だけで動いているようにさえ見えました。
日本の文化であり、仏教やお寺は伝統を重んじる傾向は強いですが、
時代のニーズに合わせて様々な納骨方法が出来ていますので、家庭の状況と価値観、経済的な事情に合致する
納骨方法を選んでいくのが良いのではないでしょうか。
継承者がいなくて困るのは墓地管理者側の事情です。
継承者がおらず守る人がいなくなったお墓は、管理費を支払ってもらうこともできなければ、倒壊の危険が出た場合は
墓地管理者側が費用を出して対処するしかなくなります。
継承者がいないことであなたが否定されている訳ではありません。
他の納骨方法を選択すれば良いだけですので気にする必要はありません。
かつての日本人にとってのお寺とお墓
日本においての仏教やお寺の檀家という制度がここまで根付いたのには、
江戸時代の寺請制度が関係しています。
幕府の宗教統制の一環として作られた制度で、キリスト教徒ではないことを証明する為に
いづれかの寺院を菩提寺にして証明をしてもらう必要がありました。
現在で言うところの戸籍制度のようなものでしょうか。
さらには、寺子屋といわれる教育の場という役割も担っていた為に、日本で生きていくためには切り離せませんでした。
現代における仏教やお墓
現在の日本においては政治と宗教は切り離され、住所の変更や引っ越しは自由にできます。
お寺が担っていた制度的な役割はなくなり、無理にお寺に関わらなくても生きていくことができます。
役割を失った時にそれに代わる価値を提供できなかったことで、時代とともに仏教離れが進んでいるの
ではないかと思っています。
お墓を持つメリットとは
精神的な拠り所になる
お墓の物理的な役割がお骨を納骨することなのに対して、精神的な役割も存在します。
お墓は亡くなった大切な人を供養する為に建てるという側面と、残された遺族の精神的な支えになるという
2つの側面があります。
墓石を撫でたり、墓石に話しかけている人を多く見かけると思います。
お墓があることにより、故人がそこにいて、お墓詣りは故人に会いに行くという感覚を多くの方が持っています。
そうやって大切な人を亡くした悲しみや寂しさから立ち直り前向きにいきていく為の物でもあります。
そういう意味では、お墓は残された遺族の為の物であるとも言えます。
家族の繋がりを感じることができる
お墓を家単位で持つことで先祖代々の繋がりを感じることができたり、将来自分が他界した時にも
行き先が決まっているという安心感を得ることができます。
現在は家族ごとにお墓を持たなくても納骨する場所はたくさん存在します。
しかしながら、家族という枠組みから個人の趣向が重視されることがあります。
例えば、おじいちゃんは海が好きだったから海が見える霊園の永代供養墓、おばあちゃんは自然志向だから山の中にある樹木墓、
父は海洋散骨してくれと言っているし、母は友達と隣同志の樹木葬を予約してきて墓友だと話していた。
個人の趣向が優先されることで家族がバラバラの場所で眠るということは普通に起こってくると思います。
お墓を持たないメリットとは
お墓に縛られずその時々で自由な選択ができる
お墓を持つと簡単に引っ越し等もできなくなります。
転勤が多い会社に勤めていたりすると、そもそも日本にいれるかすらわからないという方も
たくさんいらっしゃるのではないかと思います。
お墓に縛られない生き方を実現できる方法であると思います。
また、海や山、樹木や花、利便性など、自分の趣向に合わせて選べることも大きなメリットと言えます。
お墓を持たない場合の選択肢とは
現在は多様化する価値観に合わせて色々なタイプの納骨先があります。
一般的にどうすべきというよりは、故人や遺族の価値観に合わせて選ぶべきだと思います。
永代供養墓
お墓を一戸建てに例えるなら、永代供養墓はマンションといったイメージとなります。
一人ひとりに対して石碑は容易せずに、石の大きなモニュメント等がある場合が多いです。
内部にある納骨棚に一定期間骨壺で安置した後に、骨壺から出して合祀するのが一般的です。
骨壺の状態で安置する期間により細かい料金プランがあり、すぐに骨壺から出して合祀してしまう
プランが一番安いです。
料金については、最初にまとめてお金を払ってしまうとそれ以降はお金がかからないのが一般的ですが、
棚に骨壺の状態で安置している期間は管理費が必要な施設もあるので事前の確認が必要です。
樹木葬
樹木葬は、自然志向の人が増えてきたことで人気がある埋葬方法です。
樹木墓地というエリアの中に穴を掘り、骨壺ではなく布の袋に入れて土の中に納骨をします。
石材を使った大きなモニュメントを必要としない為、費用も安い傾向にあるのも人気がある理由です。
花や大きな木などをモニュメントとすることが多いようです。
海洋散骨など
海洋散骨は文字通り海への散骨を行う方法です。
海洋散骨を取り扱っている会社へ申し込みを行い、事前に専用の機械を使ってお骨をパウダー状にします。
そして散骨当日に船で海へ出てお骨を海に散骨します。
納骨にあたっては墓埋法という法律で規制があります。
古い法律なので海洋散骨をピンポイントで取り締まるような内容にはなっておらず今のところ大きな問題にはなっていませんが、
法的にグレーな方法ではあります。
さらには、お骨が手元に残らないことに加えて、場所すら特定ができなくなることから、
どこに向かって手を合わせればいいのか。というようなトラブルが起こりやすい方法でもあります。
実施の際にはご家族や親戚などでしっかり話し合い、同意を得たうえで行うようにしてください。
手元供養
手元供養とは、火葬を終えて骨壺に入った遺骨を自宅で安置することです。
お子様を亡くされた夫婦が、気持ちの整理がつかずご自宅に何年も安置されているといったこともあります。
法律的にも安置することは問題ありません。
しかし、墓地とされている以外の場所で埋葬をすることは法律で禁止されています。
ご自宅の庭などに埋葬は出来ませんのでご注意ください。
まとめ
日本においては古くから仏教とお寺、家ごとにお墓を持つという慣習が続いてきました。
しかし、高度成長期を迎え先進国となり、生活の状況や価値観が一変しています。
伝統を重視する、お寺や霊園においても時代の流れに合わせた色々な納骨方法が出来てきました。
慣習であったり、こうあるべきということに縛られすぎず、
ご自身の家庭の環境に合うものを選ぶことが大切であると思います。
選択肢が増えたからこそ、契約内容や長い目で見た時のメリットやデメリットを調べたうえで
一番良い選択ができることをお祈りしております。